2011年11月1日火曜日

レイ・ブラッドベリ 「なんとか日曜を過ごす」


かすかな、試し弾きのような、ハープの呟きが聞えた。
また静まりかえった。
それから再び吹き始めた風に乗って、ゆるやかな演奏が聞えた。
それは古い唄の調べだった。ぼくは歌詞を知っていた。独りで歌詞を呟いた。


 唄に合せてかろやかに歩めよ、
 やさしい草を傷つけぬよう。
 人のくらしには雨あり風あり、
 砂時計のなかでは砂あらし。


そう、とぼくは心のなかで言った。つづけてくれ。


 涼しい日陰を気楽にさまよい、
 日ざしのなかではひなたぼっこ。
 飲みものよ、ありがとう、たべものも、
 葡萄酒も、かわいい女たちも。
 くらしはいずれ終るのだから、
 クローバの上をかろやかに歩めよ、
 いとしいひとを傷つけぬよう。
 こうして、くらしから出て行こう、
 さよなら、ありがとうと言いながら。
 すべてがすんだらゆっくり眠ろう、
 いのちと引き換えの眠りだもの。

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